2009年9月29日火曜日

裁判員裁判における弁護士の負担

弁護士の偏在による弁護士への負担が浮き彫りになりました。
裁判員裁判においていかに分かりやすく説明するか、その為に必要な映像、動画、パネルをどれだけ準備出来るか、この点において弁護士は検察に比べると圧倒的に不利な状況ということです。
特に地方となるとその差は歴然。
弁護士が自らの準備不足を弁護してから始まる裁判なんて・・・
しばらく様子を見た方がいいでしょうが、改善の必要がありますね。

◆裁判員裁判、地方ならではの苦悩 遠隔地、弁護士の負担増…(9月25日 産経新聞)

 全国で本格的に始動した裁判員裁判。東北6県でも今月2~4日に青森地裁で行われたのを皮切りに、今月末から11月半ばにかけ、各地裁・支部で相次いで 開かれることが決まっている。青森地裁の審理では、弁護側が遠隔地の被告と接見する負担の大きさを強調するなど、地方ならではの苦悩が垣間見られた。青森 のケースを振り返り、東北での裁判員裁判の課題を検証した。

 「検察官のような潤沢な準備はできていませんが…」。2件の強盗強姦罪などに問われた男(22)の審理が行われた青森地裁。2日の初公判で、弁護側の冒頭陳述に立った主任弁護人の竹本真紀弁護士は、こう自分たちを卑下することから始めた。

 検察側は、青森地検ナンバー2の田野尻猛次席検事を筆頭に男女4人を並べる重厚な布陣で、事件の経過を一覧表にしたパネルを立て掛けるなど、準備に抜かりがなかった。公判の日程に合わせてリハーサルも入念に繰り返したという。

 竹本弁護士は通常業務をこなしながら、週に1、2回、車で往復3時間かけて、男が拘置された十和田署まで通わなければならなかったという。地元の弁護士 とペアを組んだが、「今回は本来ならば八戸支部の事件だ。接見時間も限られ、十分な打ち合わせができなかった」と嘆いた。

 実際、男が自分に不利な証言をしてしまう場面が何度も見られた。例えば、女性への制裁で強姦をしたという点。検察側が「なぜ制裁の手段に強姦を選んだの か」と問われ、「女性に暴力をしてはいけないと教えられていた。それ以外で思いついたのが強姦だった」と平然と答えている。

 判決は、検察側の求刑通り15年だった。公判を傍聴した弘前大の飯孝行准教授(裁判法)は「検察側は逐一、次席検事がチェックししながら進めていた。準備の違いで、量刑が決まってしまったところもあるのではないか」と振り返る。

 東北6県では県庁所在地の地裁本庁のほかに、29の支部が置かれているが、裁判員裁判が行われるのは本庁と福島地裁郡山支部の7カ所に限られる。警察の拘置施設は各県全域に広がっているため、竹本弁護士のような苦悩は、これからも出てくると思われる。

  ■  ■  ■

 弁護士の地域的偏在も見逃せない問題だ。

 平成20年の弁護士白書によると、人口10万人あたりの弁護士数を示す「弁護士率」は、全国7位(12・06人)の宮城を除き、青森47位(4・55 人)▽岩手45位(5・06人)▽秋田43位(5・35人)▽山形42位(5・42人)▽福島40位(5・56人)-と弁護士不足が顕著になっている。

 さらに、青森、岩手、福島の3県では40歳以下の若手の占める割合が高く、経験を積んだ中堅が充実していない。町村部の弁護士になると、刑事裁判をほとんど経験していないケースも珍しくないという。

 「被告との接見は地元の弁護士、法廷での弁論は都市部のベテランと住み分けるのだろう。それでも弁護士の負担は確実に増大し、審理に影響してくる」。飯准教授はこう憂慮した。

 地裁本庁で一括して審理することは、遠隔地の裁判員候補者にも負担となる。

 青森地裁は今回、裁判員の選任手続きを初公判前日にした。遠隔地の候補者に配慮したとみられるが、出頭を求められた39人のうち、出席者は34人にとどまった。1件目の東京地裁で49人中47人、2件目のさいたま地裁では44人中41人だったのに比べると少ない。

 候補者だった十和田市のの松井満さん(53)は「保険代理業を1人でやっているので、裁判員になれば完全に仕事を休まなければならない。選任手続きということで顧客にも理解してもらったが、審理が3日間になると厳しい」と率直に打ち明けていた。

 飯准教授は「農林水産業など家族経営の人が裁判員になれば、たとえ3日間であっても負担は大きい。選任手続きの出席率が低かったことは、そうしたことも影響しているかもしれない」としている。

     ◇

 青森地裁で開かれた裁判員裁判の3日間の審理を取材し、改めて感じたのは、人を裁く立場に置かれた裁判員の負担の大きさだ。

 判決公判後の記者会見。裁判員経験者の男性が感情を抑えきれず涙を流す場面があった。人の運命を決める重圧やそれを乗り越えた達成感、さまざまな思いが胸をよぎったことだろう。

 中には守秘義務違反を憂慮して「今後は深酒はできないかもしれない」とボヤく経験者も。裁判員体験は公判を終えた後も、その後の人生に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

 一方で、制度の意義を強く感じる場面にも出くわした。被告人質問で、女性裁判員が投げかけた言葉。「被害者が帰宅したとき、逃げてさえいれば、凄惨(せいさん)な事件にはならなかったと思います」

 プロの裁判官からこうした“意見”が述べられることはほとんどない。訴えかけるように発せられた一言に、被告が「はい」と素直にうなずいた意味は小さくないのではないか。

 今後、自分を含めて誰もが裁判員になる可能性がある。適用罪名や量刑の判断だけではない、プラスアルファの部分にこそ、負担を差し引いても裁判員を引き受けるだけの価値があると感じた。

2009年9月11日金曜日

町医者みたいな弁護士に

まだまだ地方の弁護士不足はありますがなかなかそれが伝わりません。 地方で実際に活動していた人たちがこうやって新しいモデルケースを作っていくことで、地方で活躍でいる若手が増えていきそうな予感です。
報酬を気にせず働くというのは非常に難しいでしょうが、そういう気持ちの弁護士さんがいるというだけで何となく暖かくなりますね。

◆公設事務所:県内初開設へ 3弁護士で30日から--横浜 /神奈川(9月7日 毎日新聞)

 ◇過疎地の経験伝え派遣元に

 弁護士がいない地域への派遣など公益性の高い弁護士活動に取り組む県内初の「公設事務所」が30日、横浜市中区に開設される。地方への派遣元とな る都市型事務所で、高知県の過疎地型事務所に3年間所属した横浜弁護士会の石川裕一弁護士(32)ら3人が共同代表を務める。石川さんは「地方と都市の格 差を都市部の弁護士にも分かってほしい」と話す。

 事務所名は「かながわパブリック法律事務所」。過疎地型事務所で任期を終えた弁護士を受け入れ、新たに養成した若手弁護士を送り込む。石川さんは 「人材が循環し、情報が蓄積される事務所のモデルケースを目指す」という。労力の割に報酬が低くなりがちだったり、無罪を争うなど難しい事件も積極的に請 け負う。

 「町医者みたいな弁護士になりたかった」という石川さん。弁護士2年目の04年、50年以上にわたり弁護士がいなかった高知県安芸市に新設された 過疎地型事務所に赴任した。当時は沖縄県に次ぎ全国で2番目に県民所得が低く、借金問題が相談の大半を占めた。個人の金貸しや違法な手口も横行し、家族全 体の借金整理が必要なことも多かったという。

 3年間で受けた相談は約600件。刑事事件や離婚問題など弁護士としてのあらゆる仕事をこなし、「暇はなかった」。08年1月、3年間の任期を終え横浜に戻り、「過疎地での経験を伝える仕組みが欲しい」と、弁護士仲間に都市型事務所の必要性を訴えた。

 スタート時の所属弁護士は3人。石川さんのほか、熊本県の過疎地型事務所を経験した北條将人さん(35)と、29日に始まる横浜地裁初の裁判員裁 判で弁護人を務める川島明子さん(39)で、いずれも任期は3年間程度。来年初めまでには、間もなく司法修習を終える新人弁護士2人が加わる予定だ。

 「来る者は拒まず、フットワークの軽い事務所にしたい」。石川さんらは新しい仕事場で荷ほどきをしながら、事務所のルール作りを進めている。

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 ■ことば

 ◇公設事務所

 日弁連が資金面を、地元弁護士会が技術や人材確保を支援して設立する法律事務所。00年に始まり、地方の町などに設けて弁護士不足の解消を図る 「過疎地型」(約70カ所)と、過疎地型事務所に派遣する弁護士の育成や国選弁護など公益性の高い業務に取り組む「都市型」(14カ所)がある。